2025年1月

鈴木 貴博日本経済復活の書 2040年、世界一になる未来を予言するPHPビジネス新書

本書の副題は「2040年、世界一になる未来を予言する」というものです。まあ、その時私は80歳ですので、あまり関係はなさそうですが、子供世代には影響しますよね。

鈴木さんの経歴は東大−ボストンコンサルティンググループ−独立、というピカピカのエリートの方のようです。専門は未来予測とイノベーション戦略。

で、鈴木さんが日本の未来を予測するわけですが、人口の減少も予測される日本、このままでは現状維持すら難しいようです。ではありますが、それをそのまま受け入れてしまっては有能なコンサルタントとしては実も蓋もありません。で、鈴木さんは「これまで30年間、日本経済が地盤低下を続けてきたのは本当にやるべきことをせずに、決めやすいことしか決めてこなかったからだ」という不都合な真実を前提に大胆な提言をぶち上げます。で、ぶち上げたのが「日本経済の魔改造」です。魔改造って、若者向けのクルマ雑誌なんかで目にするコトバです。どんなのかって言うと、軽自動車にでかいアメ車のV8エンジンをぶっこんじゃう、みたいな感じがあります……。私の個人的感じですよ、もちろん。で、鈴木さんがどんな魔改造を意図しているか、は本書をお読みくださいね。

果たして鈴木さんが主張する通り「数字でマイナス×マイナスがプラスになるように、受け入れがたいマイナスの未来が二つ重なることで、絶望の先に希望が見えてくる」のでしょうか。

はてさて、「ときめく」魔改造って現実化するのでしょうか。そもそもあなたは魔改造を現実化させたいでしょうか。あなたはどちらですか。

 

 

植草 一秀『千載一遇の金融大波乱』ビジネス社

本書は2023年の1月に出版されています。ですから書かれたの2022年ということになると思います。で、2023年が過ぎ、この書評を書いているのが20247月。日経平均のチャートを見ると、一本調子とは言いませんが、そのころから大きな下落もなく上昇しています。こんな相場、私は全く予想していませんでした。植草さんも……。ま、後からだったら何とでも言えるわな。

ということですが、植草さんが本書で指摘している問題は何一つ解決されたとは言い難い状況です。そしてその結果起こるであろう予想図は、今現在でも有効な示唆を与えてくれるものと思います。

私は現在の世界的な株高は中銀バブル(コロナ禍を契機として主要各国において低金利政策(及び過剰流動性の供給)が採られた)によって人為的に演出された相場だと思っています。そうであれば……。そうですよね植草さん?

本書を株式投資の推奨銘柄リストとして使おうと思っておられる方には向かないと思いますが、今後の日本経済の俯瞰図としては役立つ視点を提供してくれるものと思いますよ。植草さんの挙げるリスクは3つ。「第3次世界大戦勃発のリスク、世界恐慌発生のリスク、そして中国大波乱のリスク」です。2023年には起こらなかったわけですが、火種は今現在でもくすぶっています。何しろ植草さんは「戦争は必然によって生じるものではなく、必要によって創作されるもの」なんて指摘しておられます。戦争でさえそうなら……。2024年の後半、2025年以降はどうなるのでしょう。

千載一遇のチャンスは、いつ来るのでしょうか?いつ、と正確には答えられませんが、備えておくことはできます。備えておかなくっちゃ。

 

 

名和高司資本主義の先を予言した 史上最高の経済学者 シュンペーター』日経BP

著者の名和さんは東大卒業、三菱商事入社の後、ハーバード・ビジネス・スクールで修士号取得、マッキンゼー入社、ディレクタ−としてコンサルティングに従事、と私なんぞとはラベルの違うビカビカのエリートの方のようです。

本書の帯には「本物の経済学とはなにかを知れ」と大きく書かれ、経済学にはイノベーションとルビが振ってあります。ま、これが名和さんの言いたいことなんでしょうね。

でも、シュンペーターの原著って「理屈っぽくて読みづらく、しかも分厚い」んだそうです。そんなシュンペーターの主著3冊を名和さんが読み解いてくれています。ま、そういうことですので、本物の経済学を知るために本書を紐解いてみることにしました。ビカビカのエリートの名和さんが言うんだから間違いない!?

ところで、名和さんはシュンペーターが資本主義の終焉を予想していたこと、破壊的な革命を否定していた(だからレボリューション(革命的破壊)ではなくイノべーション(創造的破壊)なんでしょう)ことなども指摘しています。それだけではなく、シュンペーターは「どうしたらいいのかの答えも出しているのです」だそうですよ。そうだったの‼ここから先は本書をお読みくださいね。

 

 

眞邊 明人もしも徳川家康が総理大臣になったら』サンマーク出版

眞邊さんは「家康は意図的に 当時の“領土を拡大して成長する”ことを止めた、世界でもまれに見る異質のリーダーであった」としています。「結果、江戸時代は265年間も続く、太平の時代になった」のです。確かに。

で、ここからが本書のお話。パンデミックでパニックになった現代日本政府は、「AIと最新ホログラム技術で偉人たちを復活させ、最強内閣を作る」のです。総理大臣には徳川家康、官房長官には坂本竜馬、財務大臣には豊臣秀吉、産業経済大臣には織田信長、文部科学大臣には菅原道真などなど日本史に名を遺す偉人たちに、させます。で、その結果……。最近実写映画化されたコメディーです。

著者の眞邊さんは、「吉本興業において、新規事業を手掛け事業の成長を導き独立。作家として活動しながら、エンタテイメント事業、教育事業を推進している」という方です。で、その講演のテーマは「徳川家康、徳川綱吉、田沼意次といった歴史上の人物の実績を基に、現代のビジネス上の課題を解決する方法を示唆します」なんて紹介されてます(ノビテクビジネスタレント)。本書はそのものずばり、を小説家したものでしょう。

本書、政治パロディーものの本かともおもいますが、眞邊さんの経歴からもわかる通り、立派なビジネス書としての内容を持っています。コンピュータに政治を任せることについての作中人物の会話に「それでも生身の政治家よりはいいんじゃない」というのがでてきます。立派な政治風刺にもなっているようです。

 

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