20227

瀬戸 睿 『日本社会は鬼ばかり 老練精神科医の時評』朝日エディターズハウス

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日本社会は鬼ばかり 老練精神科医の時評 [ 瀬戸睿 ]
価格:990円(税込、送料無料) (2022/5/25時点)

著者の瀬戸さんは1941年生まれの精神科医。文面から見ると現役のようです。その瀬戸さんが安倍時代から様々な媒体(掲載媒体名を示してあります、と書いてありますが、私は上手く見つけられませんでした)に書いたエッセイをまとめたもののようです。ですから、時候の話題など読んでいる時点とズレが生じるのはやむを得ないのかもしれません。確かに執筆時から年単位で時が経ている問題もありますが、相も変わらず同じような問題が何の進展も見られず放置されている場合も多いみたいですねえ。

ところで本書に「もう50年近く精神科医をやっていて、不思議に思うことがある。それは、外来診療に来られる教員と警察官の多さである」と書かれていました。教員はまあ、なるほどとも思いますが、何で警察官なんでしょうか。やっぱりものすごいノルマのプレッシャーの下で働いていることの現れ、なんでしょうか。責任者出て来ーい。それに、私たちもしっかりしなきゃ、ね。

 

 

プチ鹿島『こんな日本に誰がした!』文藝春秋

新聞の読み比べが趣味というプチ鹿島さんが、日々の新聞読み比べで「ギョッと」したことを書き綴った本書。プチ鹿島さんは、今の日本は「なんというか、そこまではしないよねという最低限の信頼の底が抜けた感」があるとしています。まったく同感。責任者出て来ーい。

ま、責任者が出てきたためしはありません。大体、責任者って 言うからには責任をとるものだと思いますが、責任なんて取らないもんね。それよりも何よりも、私たち有権者が自分で考え、自立した個人として行動するというシンプルなことが重要なんではないでしょうか。為政者のレベルってのは選挙民のレベルの反映らしいですからねえ。指導者がアホなのは選んでいる我々がアホだから、ってことになりますね。プチ鹿島さんの本を楽しみながら読んで、私たちも政治にも関心を持とうではありませんか。

 

 

本間 龍『原発広告』亜紀書房

 

ロシアのウクライナ侵攻において、原子力発電所への攻撃が取り沙汰されました。今までのところ原子力発電所にミサイルが撃ち込まれ放射能がまき散らされるような事態は起きてはいませんが、その危険性が現実のものとして認識されました(【解説】なぜロシア軍はウクライナの原発を攻撃するの?チェルノブイリ、ザポリージャの次に標的になりうる原発は Greenpeace Japan  )。

また、日本では複数の首相経験者が東京電力福島第一原発事故の結果、多くの子どもたちが甲状腺がんに苦しんでいるとする書簡EUに送ったところ、政府などから誤った情報を発信しているとの批判が巻き起こりました。日本では甲状腺がんが多発しているなどと言うことは起こってはいけないことであり、従って認めていません。311においてチェルノブイリ(今だとチェルノービリって書かんといかんか)以来とも言われる原発事故が日本で起きたんですけどね。

本書評でも何度も指摘しましたが、日本人は反省することが本当に苦手な民族であると思います。経営学における著名な理論にPDCA理論がありますが、日本ではPplan)とDdo)には時間も手間も欠けるのですが、Ccheck)とAact)には手間も暇も欠けません。一旦実行されてしまうと、それ自体が巨大な慣性をもって動き出してしまい、いかなる批判も許さなくなるのです。これは名著『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』で指摘されているところです。たった数十年では日本人の気質は変わりようがないのでしょう。

最近では『ブラックボランティアにおいて日本では不都合な真実を暴き出した本間さんが原発の闇について告発した本書、ぜひご一読を。

 

 

荻原 博子私たちはなぜこんなに貧しくなったのか文藝春秋

FP(ファイナンシャル・プランナー)の星(だってFPの資格って、取ったからってそれで食っていける訳じゃないんです。私も持ってるけど。FPですって言ってまともに食ってる人って荻原さん以下、少数だと思いますよ)荻原さんが昨今の日本において「私たちはなぜこんなに貧しくなったのか」を正面から問いかけた本です。

本書において「上がりエスカレーターの「昭和世代」、下りエスカレーターの「平成世代」、「令和世代」の多くは下りエスカレーターから飛び降りた」と例えられています。令和世代は飛び降りたんではなく振り落とされたんではないの、とも思いますが、概ねその通りですねえ。

ロシアのウクライナ侵攻は本書評執筆時点で終結を見ていませんが、日本円は20年ぶりとか言う円安に見舞われています。為替レートって、言ってみれば一国の株価みたいなものです。外国の投資家から見れば、別にロシアから侵攻されたわけでもない日本ではありますが、将来性はない、って評価を受けているわけです。政治家の皆さんももう少し真剣に受けてほしいものですねえ。

経済力に陰りが見えるだけではありません。能力・教育分野でも「スイスのIMDの「世界人材ランキング」では何と63ヶ国中48位」、「日本はOECD34ヶ国中で最も高等教育(小学校から大学までの教育機関に対する公的支出)にお金を出さない最悪な国」になってしまいました。ダメじゃん。

あ、本書でひとつだけ間違いを見つけました。1998年の大蔵省接待汚職事件にからみ、かの有名な「ノーパンししゃぶしゃぶ」のお話が出てくるのですが、「向島あたりで銀行の接待を受けていた」なんて書かれていますが、このお店は……。なんで知っているかって言うと、……。

本書で気に入った表現が「「異次元」から帰ってこられなくなった「金融政策」」というものです。政府・日銀の自縄自縛ぶりを表した的確な表現ですねえ。でも、20224月現在、諸外国の政策変更に伴い、この政策にも変更が迫られています。年末までには大きな政策変更が余儀なくされるはずですが、さあ、どうなりますか。

本書では様々な日本にとっての“不都合な真実”が暴かれています。別に荻原さんが煽っているわけではありませんが、本書を読んでいるとふつふつと怒りがわいてきます。現実を知るためにも是非ご一読を。

 

 

20226 

加藤 諦三メンヘラの精神構造PHP新書

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メンヘラの精神構造 (PHP新書) [ 加藤 諦三 ]
価格:968円(税込、送料無料) (2022/4/24時点)

メンヘラとはメンタルヘルスを略した言葉だそうです。メンタルヘルス(精神的健康)を略しても意味が変わらないような気がしますが、メンヘラって言葉には違った意味があるようです。それは、「心の病んだ人」って意味みたいです。だから本書の中で加藤さんはメンヘラ社員ではなくメンディスって言いたいなんて言ってます。メンディスってmental  diseaseの略ですよ。これなら意味は通るわな。

本書でメインに取り上げられているのはいわゆるメンヘラです。「「メンヘラの精神構造」とは、心理的成長に失敗した人の精神構造」です。子どもから大人になる過程で人は色々な壁に直面します。それを何らかの形で克服して成長していくのですが、そのような課題にまともに取り組まず、従って問題を克服することなく大人になってしまう。一人の大人として自立していない。で、あーだこーだと文句ばかり言って騒ぐことになります。

メンヘラの人とは、「メンヘラ社員は騒ぎ嘆くだけで、困難には具体的に対処しない」「過度の被害者意識は、攻撃性の変装した意識である。苦しみは非難を表現する手段である」らしいです。なるほどねえ。私もある部下から自分のことを認めてくれないだどーだこーだと文句を言われたことがあります。相手が本書に出てくるタイプだったのか、私がそのタイプだったのか……。

メンヘラ社員なんて言うと、現代的な病、なんて感じがしますが、かつて“24時間闘えますか” なんてモーレツ社員は、「現象的は正反対であるが、心理的には同じである」んですって。両者とも心の中には同じように攻撃性を持っているのですが、その偽装の仕方が違うのだそうです。また、かつてゲバ棒を持って戦っていた学生が、あっという間に髪の毛を切ってサラリーマンになっちゃったのも同じようなもんなんだそうです。人間が根本的に変わったのではなく、その攻撃性の偽装が変わっただけなんだそうです。

本書はさらにメンヘラの奥にある心理状態を分析していきます。ま、分かるんですけどね、疲れちゃった。私も還暦ですもんね。メンヘラタイプの人間とは付き合わないことにしましょう。今さら友達を作ろう、でもないもんね。嫌なヤツとはおさらば。無理かね。

 

 

池谷 敏郎代謝がすべて やせる・老いない・免疫力を上げる』角川書店

本書もいわゆるダイエット本です。ではありますが、本書の著者の池谷さんは現役のお医者さんです。ですから、これこそ究極のダイエット法だ、なんてことは全然書いてなくて、人間のエネルギー消費(代謝)のメカニズムはこうなっていて、こういう時にこうすればエネルギーが消費され、結果として痩せるわけです、なんて書いてあります。

従って、本書は情報量が多い。いや、私なんぞには多すぎる。私のようなデブでも、これで痩せる、なんてことは書いてありません。まじめに勉強するしかないのかな。うーん。どうすりゃいいんだ。

 

 

ペトル・シュクラバーネク 大脇孝志郎訳『健康禍 人間的医学の終焉と強制的健康主義の台頭』生活の医療社

健康の追及は今ではほとんど国家イデオロギーです。本書にも「健康主義は強力なイデオロギーである。なぜなら、非宗教化した社会において、健康誌主義は宗教が欠けたあとの真空を埋めてくれるから」なんて書かれています。不健康で自堕落な生活を送っている人間は今や国家反逆罪を犯す極悪人みたいに思われています。それじゃ、病人は因果の報いか?

昨今の話題はコロナ禍です。言うところのコロナ脳になってしまうのはまずいと思いますが、コロナなんて関係ねえ、って独りよがりの行動をとるのも同様にまずいのではないでしょうか。何事もバランス、中庸が大切ですよね。

コロナ禍のいま、健康とは何か、人間的医学とは何かを考えさせる一冊でした。

 

 

山本 健人医者が教える正しい病院のかかり方』幻冬舎新書

この本は「医者と病院のトリセツ」なんだそうです。山本さんは「医師をうまく利用する力を身につけることも大切です」とも書いてますね。

本書の著者の山本さんは京都大学医学部を卒業された超エリート。とにかくお医者さんです。ですから、本書は「医者と病院のトリセツ」と書かれている割には、医者から見ると、良い患者さんはこうあってほしい、なんて風に書かれているように感じるところがあります。それと、家電でも何でも取扱説明書ってのは、一般素人向けに書かれているはずなのに結構難しいのがありますよね。パソコンの取扱説明書なんて、パソコンそのものの完成度が家電とかに比べるとこれは試作機ではないのか、なんていうくらいに低くて、その分取り扱い説明書がむやみと分厚くてどう読めばよいのか分からない場合があります。良く知っていれば、自分好みにカストマイズできる余地が大きいのかもしれませんが、私のような素人さんには使える組み合わせがひと通りそろっていれば、それで良いんですって。オプションが多け良いって訳じゃないんだって。

そういう意味で、本書は、医者はこんな風に考えていますよ、だから患者さんはこんな風にふるまってね、って本みたいです。でも、医者なんて、患者の言うことなんてまともには聞いてませんからね。私も頭にきて通院止めちゃったもんねえ。お前みたいな医者にかかってると寿命が縮んじゃうわ、なんてね。医者から見れば私みたいなのは碌でもない患者なんだろうな。医者と患者ってのは分かり合えないもんですねえ。

 

大脇 幸志郎「健康」から生活をまもる 最新医学と12の迷信』生活の医療社

 

本書の著者大脇さんも本職はお医者さん。ですが、実は上にご紹介した『健康禍』の翻訳者でもあります。

本書の帯に「健康に対する不真面目こそが必要とされるいま、読むべき一冊だ」なんて書いてあります。

本書のスタンスはタバコの害について書いてあることがよく表しています。大脇さんも「タバコは間違いなく体に悪い」と認めています。でも。この本は「タバコも酒もやらないが趣味や娯楽のない人生は嫌だと思う人のためでもある」なるほど。

もし統計的な理解に基づけば、「冬場のノロウィルスにやられないように生ガキは食べない方がいい。高齢者が年始に餅を食べることなどとんでもない」ことになっちゃうんです。そんな世界に住みたいですか?私は嫌だもんね。

 

 

20225 

藤岡 幸夫音楽はお好きですか?』敬文堂

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音楽はお好きですか? [ 藤岡幸夫 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2022/3/25時点)

藤岡さんは日本では普通に大学の文学部を卒業されましたが、その後英国王立ノーザン音楽大学指揮科を卒業され、現在は指揮者として内外のオーケストラで活躍されている方です。

ところで、チャイコフスキーの第5番の交響曲があります。藤岡さんにとってもチャイコフスキーは指揮者プロデビューの縁の深い作曲者らしいですが、この曲の第3楽章に、ものすごく盛り上がった後の休符で間違って思わず拍手しちゃう観客が多いことで有名な曲ですが(拍手しちゃうこと自体は問題ないそうですが、日本の演奏会ではそんなことをするとおっかない顔をしたクラシック・ファンの爺さんに睨まれます)、藤岡さんはここでは、拍手はない方が好ましいと解釈していますので、そのように指揮しているのだそうです。そんなことまで考えて指揮してるんだ!

本書はそんな藤岡さんの英国での指揮者デビューまでのお話と、クラシック音楽にまつわる様々な話題を集めたエッセイです。

 

 

藤岡 幸夫続 音楽はお好きですか?』敬文堂

で、本書はめでたく指揮者になった藤岡さんが「指揮者のこと、楽曲のこと、作曲者のことに重きをおいて」書かれたエッセイです。

本書を読んでも分かる通り、指揮者の方って、音楽はもちろんのこと、文章を書かせても、トークをさせてもとても上手で、多芸多才とんでもなく頭の良い方が多いようですね。日本で最も高名な指揮者であろう小澤征爾さんも、『ボクの音楽武者修行などのとっても面白い著作を残されています。

娘が高校生のとき交換留学でドイツに行ったのですが、ホスト・ファミリーのお父さんが指揮者で、お嬢さんの日本留学中にお父さんが日本に来られたとき、我が家で夕食をご一緒する機会があったのですが、何を訊いても(別に音楽のことでなくても)当意即妙の受け答えで、頭の良い人だなあと感心した覚えがあります。

まあ、譜面を読んだだけで頭の中で音楽がフル・オーケストラに合唱付きで鳴っちゃうような人たちですから頭の出来が違うのかもしれませんね。おまけに、指揮者なんてのは初めて会ったオーケストラでも、演奏をリーダーとして引っ張って行かなくてはいけないのですから、頭の良さを鼻にかけたような嫌味なところが全くない人間的魅力も兼ね備えている(藤岡さんもそのひとりらしいですよ)のが素晴らしいですね。

そんな藤岡さんの音楽エッセイ。CDの解説に書いてあるような通り一遍の解説ではない藤岡さん流の楽曲解釈にあふれています。ぜひYouTubeなどで音源を確かめながら本書を読んでみてください。面白かったですよ。ぜひご一読を。

 

 

小川 敦生美術の経済 “名画”を生み出すお金の話』インプレス

2008年に村上隆さんのの「アニメ顔フィギュア」がサザビーズのオークションで、1516万ドル(当時のレートで約16億円)で落札され、日本人現存作家としては破格の価格に日本でも話題になりました。このぐらいの値段ならかわいいもので、レオナルド・ダ・ビンチ作と言われる「サルバトール・ムンディ」は2017年のクリスティーズのオークションで450312500ドル(当時のレートで約508億円)で落札されました。この値段だと、さすがに寝室の壁に飾っとく、って訳にはいかないでしょうねえ。それにしてもなんでこんなに高いの?

もちろん、レオナルドの作品の芸術的価値はお金では測れない、なんてことも言えるかもしれませんが、人間の命だってお金に換算してしまうのが現代社会ではありませんか。「サルバトール・ムンディ」よりお値段の高い人っているんですかね。そう考えると、なんだか理不尽ですよね。

ところで、本書に書かれたエピソードに面白いものがありました。「経済が活況を呈している中国では、美術品オークションが兆円単位(円換算)の規模を有している」のに対し、「日本のオークション市場の売上高の総計は、150億円から200億円を推移している」んだそうです。最近の日本で美術なんてものが経済的にも大きな位置を占めたのはバブル期だけの線香花火。なんだか、日本と中国の国としての勢いの差が表れているような気がしますねえ。

そんなこんなの美術と経済の関わりについて書かれた本書。美術の見方がちょっと深くなるかもしれませんよ。

 

 

小林 頼子フェルメールとそのライバルたち 絵画市場と画家の戦略KADOKAWA

フェルメールは言わずと知れた、17世紀のオランダで活躍した風俗画家です。17世紀のオランダでは新興市民階級が成立し、その市民たちが芸術作品を買うという社会が成立していました(チューリップ・バブルなどもこの時代の出来事です)。芸術作品、といっても、当時のフェルメールなどの画家による絵画作品とは、現在でいえばちょっとした高級外車のような、ちょっとお高い耐久消費財のようなものであった、と言えば分かりやすいのではないでしょうか。買う人はそのステイタス性などをも含めた価値を期待している……、と。もちろん、そのお値段は結構ピンキリ。当時の絵画マーケットも同様であったようです。

ちょっと高級な外車の購入には、個人の趣味とかセンスが反映されるのは間違いないでしょうが、クルマは量産される工業製品でもあります。もちろん現在でも、超富裕層であればフェラーリやランボルギーニ、あるいはロールスロイスといった高級車メーカーに自分だけのワンオフ・カーを発注することは可能です。もちろん買ったことないから、いくらするのか知らんけど。当時でも、新しいお城だか礼拝堂だかを作る時にフレスコ画で壁面を装飾する、なんてことも可能だったでしょうが、王侯貴族か富裕な教会とか修道院でもない限り不可能だったでしょう。新興市民階級にできるのはせいぜいちょっと高い額入りの絵画を飾るぐらい。

そう言えば、高級自動車メーカーのCEOが、わが社の製品のライバルは、クルマではなく、別荘とかクルーザーである、なんて言っている記事を読んだ記憶があります。超富裕層の購買パターンは今も昔も一般庶民(多少上級市民だったとしても)とは異なるようです。

そのような事情の下描かれ顧客のもとに届けられた絵画作品ですから、似たようなモチーフの作品が多くの作家によって描かれた、なんていうことの裏事情も良く分かりますね。今だと芸術作品には何よりオリジナリティーが尊重されますから、他人の作品と似ている、なんて事はタブーとされますが、高級耐久消費財であれば話は別。あまりチンケであるよりは、ちゃんと人から見て高級品として通用する、己のステイスを誇示できる作品の方が好まれたのでしょう。オレは高いものを持ってるんだぞ、ってみんなに分かってもらわなきゃ意味ないですからね。だもんで、高価な絵画は通りから見えるところに飾ってたんですって。衒示的消費ですね。

絵画にまつわる経済面に注目した本書、当時の絵画のお値段にも度々言及されています。残念なのは、それが今だったらいくらぐらいになるのか、が詳らかになっていないことでしょうか(全く言及されていないわけではありませんが)。現在価値に引き直すのは非常に難しいことは認めますが。私のようなあまり絵心のない無粋な輩には、芸術的価値云々よりそっちの方に興味があるんですよね。

そんな当時の絵画(芸術)分野についてのあれこれを分析した本書、なかなか面白かったですよ。

 

 

20224

藤井 聡、木村 盛世ゼロコロナという病』産経新聞出版

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ゼロコロナという病 [ 藤井聡 ]
価格:968円(税込、送料無料) (2022/2/24時点)

本書では日本政府のコロナ対策が厳しく批判されていますが、エビデンスが示されています。本書でも日本のコロナ感染は「さざ波」と形容されています。エビデンスも示されていますよ。この表現を最初に使って大炎上、内閣官房参与の辞任を余儀なくされた高橋洋一さんの名誉のために付け加えると、彼もちゃんとエビデンスを示していたそうです(中日新聞)。でも、「さざ波」部分だけ取り上げられちゃって大炎上。なんだかなあ。

本書でも、マスコミの偽善、欺瞞が厳しく批判されています。それも確かにあるとおもいますが、私たちに最も必要とされているのは、自身の頭で考えることではないでしょうか。坂口安吾が咢堂小論の中で指摘しているように、「日本に必要なのは制度や政治の確立よりも先ず自我の確立」なのではないでしょうか。

色々考えさせられる本書、皆様もぜひご一読を。

 

 

岡田 春恵秘闘 私の「コロナ戦争」全記録』新潮社

ご存知「コロナの女王」岡田春恵さんのコロナ対策の記録です。ただどうも、岡田さん自身コロナ対策は色々な意味で失敗であったと思っているようようです。そして本書はなぜ失敗したか、を当時コロナ対策に携わって来た人物の実名を挙げて振り返っています。実名を挙げていますので、岡田さんも相当の覚悟を持って書かれたのだとおもいます。

本書を読んで最も強く感じたことは、「失敗」というのは同じような間違いの繰り返しであるな、ということです。「失敗」については『失敗の本質―日本軍の組織論的研究のような古典的名著が書かれてから久しいものがありますが、日本人は相も変わらず同じような間違いを繰り返しているようです。

希望的願望を元にした甘い見通しに基づいた作戦は、当然のことながらうまく行きません。その時点で計画の見直しをしなくてはならないはずなのですが、一旦成立してしまった計画を修正することは以前の計画の失敗を認めることにもなりますので、お役人のメンタリティーからは絶対に認められないようですね。そんなことをするぐらいなら、最初から何もしない方がましだ、ってことみたいです。

岡田さんも、「感染症研究所時代に聞いた処世術」として、「平時から大事に至る前までは海月のように海中に漂って成長し、大事に至った時には二枚貝のように砂に潜る」って言われていたんですって。

本書評執筆時点において、コロナ禍は終息していません。さて、この経験を今後のコロナ対策に、そして今後も起こるであろう様々な難題に対して生かすことができるでしょうか。

東条英機みたいに、後になってなお、「事志と違ひ四年後の今日国際情勢は危急に立つに至りたりと雖尚ほ相当の実力を保持しながら遂に其の実力を十二分に発揮するに至らず、もろくも敵の脅威に脅へ簡単に手を挙ぐるに至るが如き国政指導者及国民の無気魂なりとは夢想だにもせざりし」なんて言われても困りますからねえ。

 

 

カーヤ・ノーデンゲン 羽根由/枇谷玲子訳『「人間とは何か」はすべて脳が教えてくれる 思考、記憶、知能、パーソナリティの謎に迫る最新の脳科学』誠文堂新光社

最近流行りの脳科学、テレビなどでもよく目にします。ノルウェーでも人気のようです。その理由の一端は、脳科学が近年劇的に進化を遂げたことにあるようです。が、その新しい知識を共有しているのが、専門家や学会関係者だけ、では不十分で、より一般の人々にも理解される必要があるだろう、ということのようです。そのような目的から、本書はその執筆時にはまた20代であったノーデンゲンさんが一般読者向けに書き下ろしたもののようです。

本書で特に面白いと思ったのは依存症に関するパートでしょうか。薬物は絶対にダメ、なんて標語は目にするのですが、薬物がどのようなメカニズムで脳にどのような影響を及ぼすのか、なんてことは、一般向けの書物では詳しく語られていません。平易かつ詳しく書かれていますよ。

 

 

ローン・フランク 赤根 洋子訳『闇の脳科学 「完全な人間」をつくる』文藝春秋

本書の冒頭にはホモセクシュアルの男性の脳に直接電気的刺激を加え、異性愛者へつくりかえようとする治療(脳深部刺激療法)が紹介されています。この実験については1972年の医学専門誌に論文が掲載されているそうです。いまでこそそんなことはないでしょうが、当時の「アメリカ精神医学会が発行する精神医学の手引書『精神疾患診断マニュアル』には依然として、同性愛が精神病としてリストアップされていた」そうです。

医学の進歩、なんて言われていますが、今でも後から考えれば大したことなかったんだ、あるいはロボトミー手術のように後に否定されてしまう治療法なんてものは、私たちが思っているより沢山あるのかもしれないですね。

ただ、本書の主人公ヒース博士によって行われていた脳深部刺激療法は、現在でも応用されているようです。ただ、ヒース博士の業績はとある事情によってどこかに忘れられちゃっているそうですが。

本書はそんな脳深部刺激療法を主導していた一人の医師の物語です。

 

20223 

出口 治明哲学と宗教全史』ダイヤモンド社

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哲学と宗教全史 [ 出口 治明 ]
価格:2640円(税込、送料無料) (2022/1/24時点)

ページ数の振ってある紙だけで465ページという大部の本書ですが、古今東西の宗教や哲学を網羅しよう、という試みですので、個々の宗教や哲学について掘り下げていたら、いくらなんでも足りる訳はありません。以前も古典的名著をマンガで読んじゃおうなんてシリーズをご紹介したことがあります。同様の方向性の一冊、ということでしょう。

ですが、出口さんは折に触れてタコつぼ化している現在の学問のあり方に警鐘を鳴らしています。人類の発展とか発達を、ここはひとつ巨視的に人類の思考の発展を見てみようではありませんか。

 

 

フェルナンド・バエス 八重樫克彦・八重樫由貴子訳『書物の破壊の世界史ーーシュメールの粘土板からデジタル時代まで 紀伊国屋書店

ページ数が振ってある紙だけで465ページの次は739ページ。買うんじゃなかった。

ま、それはともかく、古今東西多くの書物が作られ、同時に多くの本が破棄・破壊されてきたようです。労力をかけて破壊・破棄するわけですから、書物には何らかの力があると思われてきたのでしょう。出席してた人の名前が分かっちゃうとか。あ、違うか。

そもそも、私たちは、巨人たちの肩の上に乗っている、だから遠くまで見通せるのだ、なんて言われています。あらゆる発明発見を利用して現在のわれわれが生存しているのです。で、その先人たちの知識の結晶が書物。

最近の政治家さんたちにはそんな考え方はどこをひっくり返してもないんでしょうねえ。

 

 

マーク・カーランスキー 川副智子訳『紙の世界史 PAPER 歴史に突き動かされた技術』徳間書店

書物はかようにも重要な価値を持つものでありましたので、それを形作る紙(パピルスとか羊皮紙とかも含めて)も人類にとってはたいそう重要な物資でありました。ではありますが、今現在私たちが「紙」と思って思い受かべる紙(「植物のセルロース繊維が無作為に織り合わさってできる、厳密な意味での紙」)ってのは、結構最近になってから普及したものなのだそうです。

紙の発明そのものは現在では紀元前二世紀の中国の蔡倫の名が多く上がりますが、実際にはそれ以前にもさまざまな形で紙のようのものは作られ、利用されていたようです。物を書くという点だけ取ってもそれ以前の粘土板や木簡なんぞに比べれば圧倒的に便利ですからね。

本書で面白いなと思ったのは、テクノロジーの進歩に関するカーランスキーさんの考え方です。「印刷がなければ宗教改革は起こらなかった」といった主張は多いものの、これは原因と結果が取り違えているのではないか、というのがカーランスキーさんの主張のようです。「印刷機は宗教改革の申し子だといった方がよほど真実に近いだろう」としています。「ヨーロッパ人は印刷機の製造法も、金属の彫り方も、鉛の鋳造も、彫られた像にインクをつけて刷る方法も」実は個別にはそれ以前から知られていた技術だったのだそうです。テクノロジーが社会を変えるのではなく、「社会の方が、社会の中で起こる変化に対応するためにテクノロジーを発達させている」のだと主張しています。宗教改革によって、多くの人に平易な言葉によって聖書を説く必要性があったからこそ印刷術の爆発的な発達と普及が起こったのだ、という認識のようです。だからこそ、同時に平易な話ことばによって書かれた聖書も生まれたのです。もっと簡単に言えば、金にならなきゃ誰もわざわざやんないよ、ってことでしょうかね。

 

 

ジャレド・ダイアモンド 小川敏子・川上純子訳『危機と人類(上)(下)』日本経済新聞社

人類は過去様々な危機に見舞われ続けてきたわけですが、本書で採り上げられているのは「ペリー来航で開国を迫られた日本、ソ連に侵攻されたフィンランド、軍事クーデターとピノチェトの独裁政権に苦しんだチリ、クーデター失敗と大量虐殺を経験したインドネシア、東西分断とナチスの負の遺産に向き合ったドイツ、白豪主義の放棄とナショナル・アイデンティティの危機に直面したオーストラリア、そして現在進行中の危機に直面するアメリカと日本……」という比較的最近の事例が取り上げられています。何で日本は二度出てくるの?

日本は選択的な政策の採用により国家的危機を乗り越えた国、として描かれていますが、日本人として日本の歴史を鑑みると、考えに考え抜いた意図的選択、というよりは、かなり偶然の要素が強いような気がします。他国民の歴史をバカにしてはいけませんが、他だってそんなもんじゃないの、という気がします。

本書は上手く行った歴史をベストプラクティスとして取り上げていますが、失敗に終わった例、悲惨な結果を招いた例なんて結構いっぱいあるんじゃないですが。で、その結果を招いた意識的な差異なんて実にわずか、なんじゃないんでしょうか。うまく行ったからって人様に威張るようなことでもないって。

さて、私は、昨今日本人だけではなく人類全体としても結構危機的な状況に置かれているように思います。上手く危機を乗り越えられるのでしょうか。

 

20222 

原田マハ風神雷神(上)(下)PHP研究所

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風神雷神 Juppiter、Aeolus(上) [ 原田 マハ ]
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風神雷神 Juppiter、Aeolus(下) [ 原田 マハ ]
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『風神雷神』は京都新聞をはじめとする地方新聞に連載されていた作品のようです。京都新聞からは京都を舞台にした小説を、などとの依頼もあったようで、本書の主人公は俵谷宗達。原田さんが日本人芸術家を取り上げたのは初めてかもしれないですね。

で、いろいろと調べてみると、生没年もはっきりしない宗達ではありますが、およそのところ安土桃山時代末期から江戸時代初期に生存していたようです。で、このころ西洋と関係のある日本人、なんて相当珍しかったはずですが、その珍しい中に天正遣欧少年使節なんてのが居ました。まあ出国当時は華々しく、という感じで日本を出たみたいですが、帰国するころには完全にはしごを外された状態だったみたいですねえ。

そして、西洋人でその頃少年だったのは、ってことで探したら出てきたのがカラヴァッジョ。天正遣欧少年使節がイタリアに行った頃には10代半ばですから、全員年のころも似通っています。

はしごを外された天正遣欧少年使節ですのでその事跡なども良く分からないことは多いようです。その中の一つにグレゴリウス13世(新しいグレゴリウス暦(現在も使ってます)を導入した方です)へのお土産(いや、献上品)として持って行った洛中洛外図(京のあれこれを書き込んだ屏風)も、史料的には何らかのものはあったと伝えられているようですが、詳細は不明のようです。で、これらの登場人物全員を都合よく知り合いにしちゃって、そこに洛中洛外図まで絡めてくる、なんてのはさすが原田マハワールド全開ですなあ。

ということで本書はフィクション。面白かった。

 

 

富田 芳和なぜ日本はフジタを捨てたのか?』静人舎

藤田嗣治(レオナール・フジタ)は第二次世界大戦前からすでにフランスで活躍する著名な画家でした。その後日本に戻り戦争画などを描いていました。戦後は「戦犯画家」としてバッシングされ、結局フランスに移住、国籍も取得(日本国籍は放棄)、フランスで没した、というのが一般的に流布されている伝記です。その伝記にいささかの異議を申し立てているのが本書です。

昭和19年の夏に、後に「美校クーデター」ともいわれる事件があったそうです。美校(今の芸大ですね)の教員に大移動があり、当時戦争画政策にかかわっていた一派が一斉に追い出され、戦争画政策に関わっていなかった一派がその後釜に座ったそうです。昭和19年ですから、表向きには軍部は威勢の良いことを喧伝していた時代です。どうも大物が後ろに控えていたみたいです。これに関連していささかまずい立場に置かれたのが藤田嗣治。

ではありますが、世界的な画家であるフジタには強力なバックが付いていました。当時の日本では泣く子も黙るGHQ。細かいことは本書に譲るとして、その後ろ盾で日本でのまずい立場とかすべてをうっちゃって最終的に渡仏することができたのでした。後に、フジタ夫人は「フジタはことあるごとに私に言いました。私たちが日本を捨てたのではない、日本が私たちを捨てたのだ、と」

フジタが最後の記者会見で言ったことは、

「絵描きは絵だけを描いて下さい。

仲間喧嘩はしないでください。

日本の画壇は早く世界的水準になってください」

というものだったそうです。

なにしろ、戦後のフジタが置かれた状況は、「その頃、フランス領事館には、フジタの渡仏を講義する手紙が送られている。ほとんどが、フジタと面識のない、しかも画家でもない人物からのものだった」「シャーマンは手紙の差出人に連絡したこともある。しかし、相手は「そんな手紙を出した覚えなどない」と頑として言いはった」んだそうです。でも、最近ではメールのIPアドレスから個人を特定、ネットで誹謗中傷をした人間に損害賠償ができるようになっているみたいです。してみると、前よりは少しはましにになったんですかね。

でも、狭い日本のなかでは思いっきり縄張り争いをするムラ社会の割に、外には弱いって体質は令和の今も変わりませんねえ。現在でも、世界のマーケットで通用する(売れる)日本人作家はごく少数のままです。

 

 

青い日記帳監修『失われたアートの謎を解く』ちくま新書

失われたアート、と言っても、失われた原因は様々です。戦災にあったもの、略奪にあったもの、宗教的理由で破壊されたものなど。

ナチス・ドイツは大々的に芸術品を略奪、ヒトラー好みじゃない芸術は焼却、ヒトラー好みの芸術品だけを並べた美術館を造ろうとしました。戦後になってこの誇大妄想的な芸術コレクションは厳しく非難されることになりました。でも、今大英博物館に展示されている芸術品って略奪されたんじゃないのか、パリのコンコルド広場になんでオベリスクがあるんだ、なんてこともやはり問題になりました。下手につつくと炎上必至。

逆に、フェルメールの贋作で戦犯になりそうだったメーヘレンをめぐる裁判ではじめてX線を使った非破壊検査が導入される、なんて良い方向への影響もありました。

アートの問題を取り上げた本作ではありますが、その背後にはやはり金のにおいがちらつきますね。

 

 

原島広至『名画と解剖学』CCCメディアハウス

ある プロの写真家の方は、プロとアマチュアの撮った写真の違いは、「プロは撮りたいと思う写真を撮る。そのためには一日中、あるいはもっと長期間、ある特定の光を待ち続けても撮る」、「アマチュアはたくさん撮影してその中から偶然撮れた良い写真を選ぶ」なんて言ってました。でも今みたいに簡単に写真が撮れるようになると、大勢の人が撮影する何百万枚枚対一枚だから、プロも大変なんよ、とも言ってましたよ。

画家だってただ単に絵を上手に描く人ではないようです。画家の場合、写真家以上に描きたいものを描くわけですから、理想の美をカンバスに再現するために作為を加える、なんてことも起こります。このモデル、脊椎の数が多いんじゃない、なんてね。それだけではなく、あっち側が透けてしまうぐらい観察して描きますので、おそらく画家はもちろん本人も気づいていなかった病気まで描いちゃったんじゃないか、なんて絵まであるそうです。

ところで、原島さんの数多くある肩書の中にサイエンスライター・イラストレーターというのがあります。で、その著作に『肉単』、『骨単』、『臓単』なんてのがありました。内容は『ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集)』ですって。ちなみに、美大でも解剖学ってあるんですって。普通の人は絶対に買わないわな。

従って、本書の内容は良くも悪くもガチ、マニアック。お好きな方には絶対に面白いでしょうが、嫌いな方には……、お止めになった方がよろしいかと。私は面白かったですよ。

 

20221

福沢諭吉原作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】学問のすすめ(文庫)』イースト・プレス

以前も古典的名著をマンガで読んじゃおうなんてシリーズをご紹介したころがあります。日本人はマンガ好きですから、いろんなシリーズがあるようです。で、こちらもその一冊。

福沢諭吉の『学問のすすめ』なんて超有名、おまけに当時のベストセラーではありますが、冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を」造らず」以外には全く知らないのが普通じゃないですか?ということで、ここはマンガでお茶を濁すことにしましょう。

 

 

宮本武蔵原作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 五輪書  [文庫]』イースト・プレス

宮本武蔵と名乗る剣術家はいたようですが、それが後の『五輪書』を書いた兵法家、有名な『枯木鳴鵙図』を描いた芸術家、あるいは十三歳から二九歳までの六十余度の勝負に無敗であったと『五輪書』に書かれた戦歴を誇る剣豪、が同一人物であったのか、などはどうもよく分からないみたいです。何しろ当時であれば結構な長寿である60何歳まで生きてたらしいですから、適当なこと言ってもバレなきゃなんとかなった、んですかね。

で、『五輪書』に書かれている兵法の極意は現代社会にも通ずる、んですって。ほう。

 

 

紫式部作 バラエティ・アートワークス漫画『『中古』源氏物語 (まんがで読破)』イースト・プレス

源氏物語なんてのは、古文の授業かなんかで断片的に読むのが関の山。大体、同じ日本語ったって、1000年前の日本語なんてほとんど外国語。上二段活用だ、カ行変格活用だ、なんて覚えた記憶はありますが、忘れた。

しかしですね、この漫画版源氏物語には、源氏物語のもう一つの側面、歌物語として歌が全然出てきません。何しろあの長―い源氏物語を文庫本1冊のマンガにするわけですから、そこらへんは潔くカット。で、残ったのは……、こりゃ単なるエロ物語だな。

 

 

太安万侶編纂 バラエティ・アートワークス漫画『古事記』イースト・プレス

ご存知『古事記』、でも読んだことは少ないのではないでしょうか。何しろ戦後は授業でも詳しくは教えていませんからね。本書評では小野寺優さんの『ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語とか阿刀田高さんの『楽しい古事記』などをご紹介してきました。今回はマンガで『古事記』ってことでご紹介しましょう。

今回はレポートを作るという想定の高校生なんかが出てきますので、古事記の本文のほかに解説が入っています。これが結構詳しくて分かりやすい。おすすめです。

 

 

舎人親王編纂 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 日本書紀』イースト・プレス

私もあまり知らなかったのですが、アマテラス、ツクヨミ、スサノオあたりのから神武東征あたりの歴史については『古事記』と『日本書紀』ってほとんど同じ話が書かれているんですね。知らんかったわ。

それにしても、何故同じ時期に国の正式な歴史書である『古事記』と『日本書紀』が編纂されたんでしょうねえ。まあ、スポンサーが乱立していたとか、いろいろあったんでしょう。日本書紀にも描かれているようですが、神話時代ではなく歴史的裏付けのある時代の歴史も、平たく言えばあっちの一族とこっちの一族の勢力争いだもんねえ。

 

 

新渡戸稲造作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 武士道』イースト・プレス

実は本書評でも『武士道はご紹介したことがあります。

新渡戸稲造が『武士道』を書いたきっかけとして、本書にも紹介されているエピソードとして、外国人に、日本の学校には宗教教育がなく、何をベースに道徳教育をしているんだと疑問を持たれたことがあるそうです。でもって武士道を取り上げた、と。でも、武士の人口って江戸時代でも高々10%以下とか……。つまり一般的ではなかったんですって。

 

 

小林多喜二作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 蟹工船』イースト・プレス

超有名な『蟹工船』。先ごろも、文庫版の装丁を変えたらまた売れだしたとか。何しろ私だって読んだことありますからねえ。でも学生時代だからなあ、忘れちゃった。マンガで復習っと。

ま、みなさんご存知のとんでもない話がこれでもかと続きます。でも、これって昔の話なんでしょうか。お上品に繕ってはいますが、本質的には今でも全然変わってない。貧乏人は死ぬまで働け、って。

 

 

Team バミンカス『コーラン (まんがで読破)』イースト・プレス

日本人にはあまり馴染みのないコーランの解説書がマンガで読めます。一つ読んでみるか。

イスラム教(最近ではイスラーム(教はなし)などとも表記されますね)においてコーラン(最近では原音に忠実にクルアーンなどとも表記されますね、意味は「詠まれるもの」)とは、アラビア語で表記され詠まれるもののみを指します。また、イスラム教では偶像崇拝は禁止(本書でも預言者ムハンマドその他の顔は描かれてはいません)。とすると日本語で、しかもマンガで表現されたコーランって一体全体何なんだ。多分、これはアホな日本人でもわかるように書かれた解説書とかパンフレット、といった扱いになるんでしょう。多分ですよ多分。詳しいことは専門家に聞いて下さいな。

 

 

ルース・ベネディクト作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】菊と刀(文庫版)』イースト・プレス

ルース・ベネディクトの『菊と刀』。有名ですが、内容については、日本を恥の文化の国としてとかしないとか。それしか知らないなあ。

まあ、ルース・ベネディクト自身、日本の専門家というわけではなく、あくまでも文化人類学者として戦時中に日本研究(どうすりゃ効率的に日本に勝てるか)の研究を命じられたみたいです。戦時中ですから文化人類学お得意のフィールドワークもままならず、結局生涯来日したことはなかったそうです。

本書は菊と刀そのものを紹介するのではなく、ティムというアメリカ人がいかにして日本を理解するのか、なんて体裁で日本文化を紹介しています。確かに当たっているんだと思います。でも、ルース・ベネディクトが研究した日本が戦前ですからねえ、私自身、こんなことしてないわ、と思うこともありました。あ、だから私ってすぐ会社辞めちゃったりするのか。

まあそれにしても、日本に“恥の文化”ってのは本当にあるんでしょうか。昨今の“説明責任を果たす”なんて言いっぱなしの政治家なんぞを見ると、日本には嘘を言ってもつかまんなきゃ良いんだ、って文化があるとしか思えないんですけどねえ。

 

 

バラエティ・アートワークス漫画【中古】 論語』イースト・プレス

師曰く「過ちて改めざる是を過ちと謂う」、とかいろいろと聞いたことはあります。でも、『論語』全体を通じて孔子はどんなことを伝えたかったのか、なんて、まるっきり知りませんねえ。でも、『論語』なんて、自分で全部読んでみよう、なんて気にはなりませんので、ここはマンガでチャチャっと、ね。

「「子曰 道之以政斎之以刑 民免而無恥 道之以徳斎之以禮 有恥且格」(子曰く これを道びくに政を以てし 之を斉うるに刑を以てすれば 民免れて恥ずることなし これを道くに徳を以てし これを斉えるに礼を以てすれば 恥ありて且つ格し)」って孔子が言ってたそうです。今の政治家に聞かせたいお言葉です。意味?ま、お調べください(漢文をコピペしてググると出てきますよ)。

 

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