20222 

原田マハ風神雷神(上)(下)PHP研究所

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風神雷神 Juppiter、Aeolus(上) [ 原田 マハ ]
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風神雷神 Juppiter、Aeolus(下) [ 原田 マハ ]
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『風神雷神』は京都新聞をはじめとする地方新聞に連載されていた作品のようです。京都新聞からは京都を舞台にした小説を、などとの依頼もあったようで、本書の主人公は俵谷宗達。原田さんが日本人芸術家を取り上げたのは初めてかもしれないですね。

で、いろいろと調べてみると、生没年もはっきりしない宗達ではありますが、およそのところ安土桃山時代末期から江戸時代初期に生存していたようです。で、このころ西洋と関係のある日本人、なんて相当珍しかったはずですが、その珍しい中に天正遣欧少年使節なんてのが居ました。まあ出国当時は華々しく、という感じで日本を出たみたいですが、帰国するころには完全にはしごを外された状態だったみたいですねえ。

そして、西洋人でその頃少年だったのは、ってことで探したら出てきたのがカラヴァッジョ。天正遣欧少年使節がイタリアに行った頃には10代半ばですから、全員年のころも似通っています。

はしごを外された天正遣欧少年使節ですのでその事跡なども良く分からないことは多いようです。その中の一つにグレゴリウス13世(新しいグレゴリウス暦(現在も使ってます)を導入した方です)へのお土産(いや、献上品)として持って行った洛中洛外図(京のあれこれを書き込んだ屏風)も、史料的には何らかのものはあったと伝えられているようですが、詳細は不明のようです。で、これらの登場人物全員を都合よく知り合いにしちゃって、そこに洛中洛外図まで絡めてくる、なんてのはさすが原田マハワールド全開ですなあ。

ということで本書はフィクション。面白かった。

 

 

富田 芳和なぜ日本はフジタを捨てたのか?』静人舎

藤田嗣治(レオナール・フジタ)は第二次世界大戦前からすでにフランスで活躍する著名な画家でした。その後日本に戻り戦争画などを描いていました。戦後は「戦犯画家」としてバッシングされ、結局フランスに移住、国籍も取得(日本国籍は放棄)、フランスで没した、というのが一般的に流布されている伝記です。その伝記にいささかの異議を申し立てているのが本書です。

昭和19年の夏に、後に「美校クーデター」ともいわれる事件があったそうです。美校(今の芸大ですね)の教員に大移動があり、当時戦争画政策にかかわっていた一派が一斉に追い出され、戦争画政策に関わっていなかった一派がその後釜に座ったそうです。昭和19年ですから、表向きには軍部は威勢の良いことを喧伝していた時代です。どうも大物が後ろに控えていたみたいです。これに関連していささかまずい立場に置かれたのが藤田嗣治。

ではありますが、世界的な画家であるフジタには強力なバックが付いていました。当時の日本では泣く子も黙るGHQ。細かいことは本書に譲るとして、その後ろ盾で日本でのまずい立場とかすべてをうっちゃって最終的に渡仏することができたのでした。後に、フジタ夫人は「フジタはことあるごとに私に言いました。私たちが日本を捨てたのではない、日本が私たちを捨てたのだ、と」

フジタが最後の記者会見で言ったことは、

「絵描きは絵だけを描いて下さい。

仲間喧嘩はしないでください。

日本の画壇は早く世界的水準になってください」

というものだったそうです。

なにしろ、戦後のフジタが置かれた状況は、「その頃、フランス領事館には、フジタの渡仏を講義する手紙が送られている。ほとんどが、フジタと面識のない、しかも画家でもない人物からのものだった」「シャーマンは手紙の差出人に連絡したこともある。しかし、相手は「そんな手紙を出した覚えなどない」と頑として言いはった」んだそうです。でも、最近ではメールのIPアドレスから個人を特定、ネットで誹謗中傷をした人間に損害賠償ができるようになっているみたいです。してみると、前よりは少しはましにになったんですかね。

でも、狭い日本のなかでは思いっきり縄張り争いをするムラ社会の割に、外には弱いって体質は令和の今も変わりませんねえ。現在でも、世界のマーケットで通用する(売れる)日本人作家はごく少数のままです。

 

 

青い日記帳監修『失われたアートの謎を解く』ちくま新書

失われたアート、と言っても、失われた原因は様々です。戦災にあったもの、略奪にあったもの、宗教的理由で破壊されたものなど。

ナチス・ドイツは大々的に芸術品を略奪、ヒトラー好みじゃない芸術は焼却、ヒトラー好みの芸術品だけを並べた美術館を造ろうとしました。戦後になってこの誇大妄想的な芸術コレクションは厳しく非難されることになりました。でも、今大英博物館に展示されている芸術品って略奪されたんじゃないのか、パリのコンコルド広場になんでオベリスクがあるんだ、なんてこともやはり問題になりました。下手につつくと炎上必至。

逆に、フェルメールの贋作で戦犯になりそうだったメーヘレンをめぐる裁判ではじめてX線を使った非破壊検査が導入される、なんて良い方向への影響もありました。

アートの問題を取り上げた本作ではありますが、その背後にはやはり金のにおいがちらつきますね。

 

 

原島広至『名画と解剖学』CCCメディアハウス

ある プロの写真家の方は、プロとアマチュアの撮った写真の違いは、「プロは撮りたいと思う写真を撮る。そのためには一日中、あるいはもっと長期間、ある特定の光を待ち続けても撮る」、「アマチュアはたくさん撮影してその中から偶然撮れた良い写真を選ぶ」なんて言ってました。でも今みたいに簡単に写真が撮れるようになると、大勢の人が撮影する何百万枚枚対一枚だから、プロも大変なんよ、とも言ってましたよ。

画家だってただ単に絵を上手に描く人ではないようです。画家の場合、写真家以上に描きたいものを描くわけですから、理想の美をカンバスに再現するために作為を加える、なんてことも起こります。このモデル、脊椎の数が多いんじゃない、なんてね。それだけではなく、あっち側が透けてしまうぐらい観察して描きますので、おそらく画家はもちろん本人も気づいていなかった病気まで描いちゃったんじゃないか、なんて絵まであるそうです。

ところで、原島さんの数多くある肩書の中にサイエンスライター・イラストレーターというのがあります。で、その著作に『肉単』、『骨単』、『臓単』なんてのがありました。内容は『ギリシャ語・ラテン語 (語源から覚える解剖学英単語集)』ですって。ちなみに、美大でも解剖学ってあるんですって。普通の人は絶対に買わないわな。

従って、本書の内容は良くも悪くもガチ、マニアック。お好きな方には絶対に面白いでしょうが、嫌いな方には……、お止めになった方がよろしいかと。私は面白かったですよ。

 

20221

福沢諭吉原作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】学問のすすめ(文庫)』イースト・プレス

以前も古典的名著をマンガで読んじゃおうなんてシリーズをご紹介したころがあります。日本人はマンガ好きですから、いろんなシリーズがあるようです。で、こちらもその一冊。

福沢諭吉の『学問のすすめ』なんて超有名、おまけに当時のベストセラーではありますが、冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を」造らず」以外には全く知らないのが普通じゃないですか?ということで、ここはマンガでお茶を濁すことにしましょう。

 

 

宮本武蔵原作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 五輪書  [文庫]』イースト・プレス

宮本武蔵と名乗る剣術家はいたようですが、それが後の『五輪書』を書いた兵法家、有名な『枯木鳴鵙図』を描いた芸術家、あるいは十三歳から二九歳までの六十余度の勝負に無敗であったと『五輪書』に書かれた戦歴を誇る剣豪、が同一人物であったのか、などはどうもよく分からないみたいです。何しろ当時であれば結構な長寿である60何歳まで生きてたらしいですから、適当なこと言ってもバレなきゃなんとかなった、んですかね。

で、『五輪書』に書かれている兵法の極意は現代社会にも通ずる、んですって。ほう。

 

 

紫式部作 バラエティ・アートワークス漫画『『中古』源氏物語 (まんがで読破)』イースト・プレス

源氏物語なんてのは、古文の授業かなんかで断片的に読むのが関の山。大体、同じ日本語ったって、1000年前の日本語なんてほとんど外国語。上二段活用だ、カ行変格活用だ、なんて覚えた記憶はありますが、忘れた。

しかしですね、この漫画版源氏物語には、源氏物語のもう一つの側面、歌物語として歌が全然出てきません。何しろあの長―い源氏物語を文庫本1冊のマンガにするわけですから、そこらへんは潔くカット。で、残ったのは……、こりゃ単なるエロ物語だな。

 

 

太安万侶編纂 バラエティ・アートワークス漫画『古事記』イースト・プレス

ご存知『古事記』、でも読んだことは少ないのではないでしょうか。何しろ戦後は授業でも詳しくは教えていませんからね。本書評では小野寺優さんの『ラノベ古事記 日本の神様とはじまりの物語とか阿刀田高さんの『楽しい古事記』などをご紹介してきました。今回はマンガで『古事記』ってことでご紹介しましょう。

今回はレポートを作るという想定の高校生なんかが出てきますので、古事記の本文のほかに解説が入っています。これが結構詳しくて分かりやすい。おすすめです。

 

 

舎人親王編纂 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 日本書紀』イースト・プレス

私もあまり知らなかったのですが、アマテラス、ツクヨミ、スサノオあたりのから神武東征あたりの歴史については『古事記』と『日本書紀』ってほとんど同じ話が書かれているんですね。知らんかったわ。

それにしても、何故同じ時期に国の正式な歴史書である『古事記』と『日本書紀』が編纂されたんでしょうねえ。まあ、スポンサーが乱立していたとか、いろいろあったんでしょう。日本書紀にも描かれているようですが、神話時代ではなく歴史的裏付けのある時代の歴史も、平たく言えばあっちの一族とこっちの一族の勢力争いだもんねえ。

 

 

新渡戸稲造作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 武士道』イースト・プレス

実は本書評でも『武士道はご紹介したことがあります。

新渡戸稲造が『武士道』を書いたきっかけとして、本書にも紹介されているエピソードとして、外国人に、日本の学校には宗教教育がなく、何をベースに道徳教育をしているんだと疑問を持たれたことがあるそうです。でもって武士道を取り上げた、と。でも、武士の人口って江戸時代でも高々10%以下とか……。つまり一般的ではなかったんですって。

 

 

小林多喜二作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】 蟹工船』イースト・プレス

超有名な『蟹工船』。先ごろも、文庫版の装丁を変えたらまた売れだしたとか。何しろ私だって読んだことありますからねえ。でも学生時代だからなあ、忘れちゃった。マンガで復習っと。

ま、みなさんご存知のとんでもない話がこれでもかと続きます。でも、これって昔の話なんでしょうか。お上品に繕ってはいますが、本質的には今でも全然変わってない。貧乏人は死ぬまで働け、って。

 

 

Team バミンカス『コーラン (まんがで読破)』イースト・プレス

日本人にはあまり馴染みのないコーランの解説書がマンガで読めます。一つ読んでみるか。

イスラム教(最近ではイスラーム(教はなし)などとも表記されますね)においてコーラン(最近では原音に忠実にクルアーンなどとも表記されますね、意味は「詠まれるもの」)とは、アラビア語で表記され詠まれるもののみを指します。また、イスラム教では偶像崇拝は禁止(本書でも預言者ムハンマドその他の顔は描かれてはいません)。とすると日本語で、しかもマンガで表現されたコーランって一体全体何なんだ。多分、これはアホな日本人でもわかるように書かれた解説書とかパンフレット、といった扱いになるんでしょう。多分ですよ多分。詳しいことは専門家に聞いて下さいな。

 

 

ルース・ベネディクト作 バラエティ・アートワークス漫画『【中古】菊と刀(文庫版)』イースト・プレス

ルース・ベネディクトの『菊と刀』。有名ですが、内容については、日本を恥の文化の国としてとかしないとか。それしか知らないなあ。

まあ、ルース・ベネディクト自身、日本の専門家というわけではなく、あくまでも文化人類学者として戦時中に日本研究(どうすりゃ効率的に日本に勝てるか)の研究を命じられたみたいです。戦時中ですから文化人類学お得意のフィールドワークもままならず、結局生涯来日したことはなかったそうです。

本書は菊と刀そのものを紹介するのではなく、ティムというアメリカ人がいかにして日本を理解するのか、なんて体裁で日本文化を紹介しています。確かに当たっているんだと思います。でも、ルース・ベネディクトが研究した日本が戦前ですからねえ、私自身、こんなことしてないわ、と思うこともありました。あ、だから私ってすぐ会社辞めちゃったりするのか。

まあそれにしても、日本に“恥の文化”ってのは本当にあるんでしょうか。昨今の“説明責任を果たす”なんて言いっぱなしの政治家なんぞを見ると、日本には嘘を言ってもつかまんなきゃ良いんだ、って文化があるとしか思えないんですけどねえ。

 

 

バラエティ・アートワークス漫画【中古】 論語』イースト・プレス

師曰く「過ちて改めざる是を過ちと謂う」、とかいろいろと聞いたことはあります。でも、『論語』全体を通じて孔子はどんなことを伝えたかったのか、なんて、まるっきり知りませんねえ。でも、『論語』なんて、自分で全部読んでみよう、なんて気にはなりませんので、ここはマンガでチャチャっと、ね。

「「子曰 道之以政斎之以刑 民免而無恥 道之以徳斎之以禮 有恥且格」(子曰く これを道びくに政を以てし 之を斉うるに刑を以てすれば 民免れて恥ずることなし これを道くに徳を以てし これを斉えるに礼を以てすれば 恥ありて且つ格し)」って孔子が言ってたそうです。今の政治家に聞かせたいお言葉です。意味?ま、お調べください(漢文をコピペしてググると出てきますよ)。

 

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