20202

百田 尚樹日本国紀』幻冬舎

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日本国紀 [ 百田尚樹 ]
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ご存知百田さんが日本の歴史を概観した本を出すということで、出版前にすでにベストセラーになっていた本書。私も予約して読んでみました。ですから第一刷です。あちこちでコピペだとか言われて刷を重ねるごとに黙って改訂されているとか噂のある本書ですが、どんなもんなんでしょうか。

内容に関する詮索はともかくとして、百田さんのスタンスはなんだかんだ言って日本褒めまくり、日本人は昔から素晴らしかった、です(太平洋戦争(百田さんは大東亜戦争の呼称が正当だとしています)当時の軍人への評価は、さすがの百田さんも我慢ならなかったのか、かなり厳しいものがありますが)。ではありますが、全体的にみて、ガッチガチの右翼が書いたトンデモ歴史書、って感じでもありません。文章としてはとても読みやすく書かれていますので、日本史の復習の代わりに読んでみても良いのではないでしょうか。特に学校では習わない戦後史の解説は、読んでみる価値があるのではないでしょうか。百田さんがお嫌いな方も、百田のヤロー、ふざけたこと言ってんじゃねえだろうな、なんて考えながら読むのも一興かもしれません。その上で日本をどうしよう、なんて考え、そして議論するべきではないでしょうか。

 

 

横山 和輝日本史で学ぶ経済学』東洋経済--

横山さんは名古屋市立大学大学院経済研究科准教授です。本書の題名から経済学史専攻かなとも思いましたが、そうではないようです。本書の内容も、歴史上の施策、政策などを、現代の経済学のタームを使って、改めてなぜ成功したのか、なぜ失敗したのか、なんてことを考察したものです。

お金なんてものが発明されたのは何千年も前のことですが、それがどのようなメカニズムで機能しているか、なんてことに注目されたのは割合と最近のことです。

それだけではなく、歴史の教科書では経済的な事象は割合サラッと書かれていて、深く分析されることは稀です。でも、この施策は成功したとか失敗したとかの結末は結構詳細に描かれていますし、歴史に興味がある方は良くご存知のことでしょう。ですから、経済学的な分析と歴史の顛末を有機的に結合できれば面白いのではないの、なんて発想で書かれたのだと思います。現代の経済の発展に伴って生じた問題だ、と思っても、類似例は歴史の中に見つかるようです。類似例が歴史の中に見つかるってことは、それに伴ってどんな弊害があったか、なんてことも分かるわけです。なるほどね、なかなか面白かったですよ。

 

 

田中 靖浩会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』日本経済新聞社

「簿記を勉強している人のほとんどは、簿記がイタリア発祥であることを教わらず、経理担当者は減価償却が鉄道会社から始まったことを知りません。公認会計士や税理士でもディスクロージャーの始まりに「JFK」のお父さん」がかかわっていることを知る人は少ないです」なんだそうです。イタリアの話は知っていましたが、それ以降は知らなかったな、確かに。歴史的展開を知れば、なぜそのような仕組みとかルールが生まれたのかが分かりやすくなるでしょう。専門家でもない私たちは、細かい仕分けの方法より、その背後にある原理原則を覚えておきましょう、ということでしょう。

ところで、本書には面白いエピソードが紹介されていましたのでご紹介しましょう。中世後期のヨーロッパでは、「数字」(アラビア数字)、「言葉」(ラテン語に代わる口語表現)、「時計」、「絵画の遠近法」、「音楽の五線譜」などの新しい知識が発明・紹介されたそうです。これらにより、「空間と時間のさまざまな計算ができるように」なったのだそうです。あらま、同じ時期だったんだ。ま、同じ時期には魔女狩りも最盛期だったとも書いてありますが。

以前『帳簿の世界史なんて本をご紹介したことがあります。その書評に私は「お隣のGDP世界第2位の大国も統計数値が全く信用できないと言われていますが、日本もそう負けていないんじゃないですかね」なんて書きました。最近の報道に鑑みると、確かに負けてないみたいですね。温故知新、何のためにディスクロージャーなんてシステムが存在するのか反省とともに本書を読んでみてはいかがでしょうか。

 

 

ナショナル ジオグラフィック別冊ナショナル ジオグラフィック日本版 2015年12月号 [雑誌]【電子書籍】』日経BPムック

聖母マリアは、聖書にその名が登場することは非常に少なく、具体的な事績が知られているわけではありません。ではありますが、聖母マリアの名は史上最も名を知られた女性であり、世界から敬愛を集めていますなぜなのでしょうか。

キリスト教徒でなくても、処女懐胎のエピソードなどは良く知られていると思います。

本書はムックであり、学術的な著作ではありません。ですから、本書には「世界で目撃された聖母」なんてページもあります。それによると、日本でも何件か聖母マリアの目撃報告があるんだそうです。へー。

 

 

20201

マイケル・ピルズベリー 野中香方子訳『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」日経BP

著者のピルズベリーさんは「ハドソン研究所中国戦略センター所長。国務省顧問」で、「リチャード・ニクソンからバラク・オバマにいたる政権で対中国の防衛政策を担当」してきた方だそうです。で、中国の専門家として「中国は、わたしたちと同じような考え方の指導者が導いている。脆弱な中国を助けてやれば、中国はやがて民主的で平和的な大国となる。しかし中国は大国となっても、地域支配、ましてや世界支配を目論んだりしない」と固く信じていたのだそうですが、最近になってそれが間違っていたことに気が付いたのだそうです。え、今まで気づかなかったの?

アメリカの中国専門家は「中国語のメッセージを、自分の考えに合うように解釈しがちだ」「私自身…中国が民主化するという話を…信じていた。いや、信じたかったのだ」とピルズベリーさんも反省して書いています。でも、これって『失敗の本質などでも散々書かれてきた間違いの典型的パターンではありませんか。アメリカはこれまで歴史的に大々的な失敗を犯したことはないので気が付かなかったのでしょうか。

とはいえ、ピルズベリーさんも間違いを認め、軌道修正をしています。ちゃんとPDCAサイクルが回っていますね。そもそも反省なぞしないどこぞの国の専門家よりは大分マシか。

それはともかく、本書の題名『2049』の意味は、「過去100年に及ぶ屈辱に復習すべく、中国共産党100周年にあたる2049年までに、世界の経済・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」という計画を象徴しているのだそうです。100年計画なんですって。で、このままだと中国は覇権国家になるであろう、というのがピルズベリーさんの見立てのようです。臥薪嘗胆。いや、とっても中国的な戦略ですね。

中国は覇権国一直線、ではあるのですが、それが確定的になるまでは、「いや、中国はまだまだ後進国ですから」なんてとぼけているのだそうです。何も謙遜しているのではなく、そんな野望があること悟らせないためなんですって。中国の統計ってのは相当いい加減だと思われています。が、どんな危機的な指標が出ても、なぜか大した事件は起きないんです。私の為替予測でも中国には様々な「致命的な」指標が出ており、危ないんじゃないの、なんて予測していますが、今のところ当たっていません。依然として中国国民をしっかりとグリップしている共産党政府の深謀遠慮に騙されているんでしょうか。

トランプ政権はそれまでの政権とは中国に対する政策の方向転換をしたように思えます。また、製造業における中国の優位(米国製の兵器にも中国製の部品を使わざるを得ない)に対抗する政策提言も国防総省から出されました。

最近も習近平主席は「党は法よりも大きい」なんて本音をポロリと漏らしたしたことがあるそうです。話せば分かる、なんて能天気に構えているととんでもないことになりかねません。日本人も相手を知る努力をしないといけませんね。

 

 

麻生川 静男本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』角川新書

上記『China 2049』において、「資治通鑑」という歴史書は毛沢東など政治家の座右の書であったにもかかわらず、軽んじてきた、とピルズベリーさんは書いています。「資治通鑑」は、「歴史を教訓とする国政の指南書」であり、「その書の核となるのは戦国時代の兵法だが、紀元前4000年まで遡る逸話や格言も収められている」のだそうです。作者として司馬光の名が有名ですが、「資治通鑑は司馬光をリーダーとする数十人の編纂チームが20年近くかけて書いた中国の歴史1500年の大ページェント」であり、その分量も330万文字、1万ページというとんでもない分量の大著だそうです。だもんで、ピルズベリーさんは英訳がない、と書いていますし、麻生川さんも日本現代語の全訳がない、と書いています。麻生川さんは、「足掛け数年かけて資治通鑑という名著を読み終えた」と書いています。数年……。ま、そんなもん私が読めるわけありませんので、解説本でちゃちゃっと済ましておくことにしましょう。

ところで、中国古典(「論語」とか「史記」、「三国志」なんか)は今でも人気があります(三国志なんてゲームにもなっています)。仁や徳を備えた為政者が治める世界、なんてのが強調される「論語」に対して、「資治通鑑」の世界は随分と異なります。ここについて麻生川さんは「現代の中国人は論語の時代と『類』が異なる」としています。『類』が違うというのは、「爬虫類」と「哺乳類」が異なるようなものを意味しているのだそうです。

いささが物騒な物言いですが、その意味するところは、「論語や三国志の時代の中国は漢民族の倫理が支配していた」のですが、その後異民族が流入、次第に力をつけていきました。その結果「中国の徳治や仁義という政治倫理が全く地に落ちてしまった。代わりに、詐術と武術が支配原理になった」のだそうです。そしてそのような行動原理は現在も続いている、ということなのです。身も蓋もない言い方ですが、頷けるものがあります。

本書は資治通鑑の解説本、というよりは麻生川さんが特徴的と思われるエピソード(取り上げられているのは残酷、贅沢、策略の三つ)を紹介する形になっています。これで充分なのかどうかは私には判断しかねますが、資治通鑑の入門編、あるいは『China 2049』の補完として読む分には大変興味深く読むことができました。

 

 

中路 啓太GHQ』文芸春秋

太平洋戦争に敗北した日本はGHQの進駐を受けます。占領側のGHQ(特にマッカーサーをはじめとする上層部)にはさまざまな思惑があったようですし、逆に日本側にも様々な思惑があったようです。占領に関わる国際法にハーグ陸戦条約というものがあり、その第43条において、「国の権力が事実上占領者の手に移った上は、占領者は絶対的な支障がない限り、占領地の現行法律を尊重して、なるべく公共の秩序及び生活を回復確保する為、施せる一切の手段を尽くさなければならない。」なんて条文もあるのですが、ジャイアンGHQはそんなもんは無視して大日本国憲法を改正しろと迫ってきます。GHQは憲法だけではなく大日本帝国を解体して民主主義国家『日本』を作るために、思いっきり日本のあれこれに手を突っ込んできましたからねえ。

ところで、本書の題名になっているGHQ。一般的には連合国最高司令官総司令部の略ですが、吉田茂は「違う。ゴー・ホーム・クイックリー(Go home quickly)だ。『さっさと帰れ』だよ」「総司令部が満足する憲法を早急に作っちまおうじゃないか。彼らはさっさとアメリカに帰ってもらおう。じっくりと時間をかけて良き国の体制を整えるのは、独立を回復してからだ」なんていうエピソードが描かれています。史実かどうか知りませんが。ですが、未だに日本はアメリカの植民地。帰ってくれなかったみたいですねえ。

本書はこのころのあれこれを基にして小説として再構成したものです。歴史小説、もしくはノン・フィクション小説、といったところでしょうか。読み物としても、とても面白かったですよ。

 

 

ジョン・ルイス・ギャディス 村井章子訳『大戦略論』早川書房

本書の題名『大戦略論』(英語では On Grand Strategy)はクラウゼヴィッツの『戦争論』(英語では On War)から採ったものらしいです。何しろ「はじめに」で本人が触れていますから。ま、その他にもOn 何とかって題名の文献はあるみたいですよ。

本はもちろんですが、論文の題名って結構大事なんです。一発でその論文の目指している方向性が分からないといけないからです。著者のギャディスさんはこの題名にすることで、本書はクラウゼヴィッツの系列に属した本なんだぞ、と啖呵を切っているわけです。ま、私のように説明してもらわなきゃ分からないぼんくらもいますので、ご丁寧に「はじめに」で強調したのでしょう。

本書では、大戦略、グランド・ストラテジーの意味を「無限になりうる願望と必ず有限の能力とを釣り合わせることを意味する」としています。なるほど。戦略がどうのこうのというより、人生訓みたいですね。ですから、本書の教える戦略は、何も国家とか軍隊だけが持つものでなく、私たち一人一人が持つべきであり、そして持っておくと役に立つもののようです。戦略ねえ。

本書は他の書評では「戦略論の新たな古典になる」なんて評されています。エピソードの多くは歴史的に有名な事例ばかりなのですが、そこから得られる大戦略に関する教訓が私には今ひとつ分かり難く思いました。大学の講義とセットで聞かなくては分かり難いのか、もしくは私がぼんくらなのかもしれませんが。

 

 

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